2021.01.01

270号 感染症対策の基本

新型コロナウイルスの感染リスクが一段と上がる最中、インフルエンザウイルスにも注意しなければならない季節になってきました。日常生活における感染防止として有効な対策や注意点を見直してみましょう。

【手洗い】 最も有効かつ簡単な方法は手洗いです。空気感染や飛沫感染よりも、手指を介した接触感染の機会の方がはるかに多いのです。感染対策の基本は手洗いといっても過言ではありません。実験データ毎に細かい数字は異なりますが、10秒以上ハンドソープ等でもみ洗いした後、流水で15秒以上流した場合のウイルスの数は0.01~0.001%程度まで減らせると言われています。2回手洗いを繰り返すと0.0001%まで減らすことが可能です。しっかりとした手順で手洗いが出来ていれば、日常生活の場合はこの後にアルコール消毒の必要はありません。

【エタノール】 エタノール(アルコール)消毒は、手洗いが出来ない場合に有効です。例えば施設に入る時に近くに水道が無いことがほとんどですよね。最近では色々なお店や施設でよく見かけると思います。消毒用のエタノールの濃度は約75~80%で調整されています。この濃度が最適だからです。濃度が薄いと消毒効果が低下し、50%以下ではあまり有効ではありません。節約しようと考えて水を足してはいけません。逆に濃すぎても駄目です。時々「無水エタノール」というのを見かけるかもしれませんが濃度は99%以上です。これは消毒には適していませんので注意してください。
 ノロウイルスには無効と言われてきましたが最近の研究では、ある程度有効なことが分かってきました。中でも添加物により酸性にしたエタノールはその効果が高まると言われています。ただしその効果は限定的のようです。長時間接触させたり、2度拭きが必要です。ノロウイルスの消毒目的として使用する場合は次亜塩素酸ナトリウムが使用できない場所や場合に使用するのがよういでしょう。ウイルスを物理的に除去するという点においても2度拭きは有効です。

【次亜塩素酸ナトリウム】 ノロウイルスの消毒薬として有名な次亜塩素酸ナトリウムですが、様々な菌やウイルスに有効で、コロナウイルスにも有効です。しかし扱いが難しいのが欠点です。濃度調整が煩雑なこと、そして人体の消毒には適さないことが挙げられます。コロナウイルスの消毒には0.05%の濃度調整が適していると厚生労働省では示しています。
 ただし、人体ではなくテーブル等の「物」が対象です。次亜塩素酸ナトリウムで消毒した後は必ず水拭きしてください。色落ちや金属の腐食にも注意が必要です。
 「次亜塩素酸ナトリウム」ではなく「次亜塩素水」というのもあります。名前や構造は似ておりますがこれはまったく別の物質です。コロナウイルスに有効なことが確認されておりますが、市販品のなかには有効性に疑問があるものも存在しますので、エタノールが手に入るのであれば優先して使用する必要は無さそうです。もし使用する場合は、拭き掃除の場合で80ppm以上含まれるものを使用しましょう。人体への安全性も評価されていないこと、時間経過で残存濃度が下がっていくことも注意が必要です。加湿器に混入する行為がネット上でも見受けられますが、次亜塩素水に限らず、人がいる空間に消毒液を噴霧する行為はWHOや厚生労働省等あらゆる保健機関が推奨しておりません。空間の除菌方法は換気です。
 この他にも一部の食器用洗剤などに含まれる界面活性剤がコロナウイルスに有効です。製品評価技術基盤機構nite(ナイト)のホームページで商品名が記載されています。また、マスクや消毒液が不足する事態になっても慌てす代替使用可能な物、そして正しい手洗い方法や換気方法など有効な手段を知っておくことが大切です。