2021.07.20

277号 夏型過敏性肺炎

夏になるとよくカゼをひく、咳がいつまでも出る・・・。もしそんな症状があったら、夏型過敏性肺炎かもしれません。「夏型過敏性肺炎」は、肺炎という名前がついていますが、普通の肺炎とは異なります。普通の肺炎は、肺炎球菌などの細菌が原因となって起こる感染症ですが、夏型過敏性肺炎は、感染症ではなくアレルギー反応の一種で、主にトリコスポロンというカビが原因となります。

◆原因  トリコスポロンというカビを知らず知らずのうちに吸い込むことによって起こる、私たちにとって非常に身近な病気です。エアコンが原因となる事が多いため、5月から10月にかけてよく見られます。トリコスポロンはエアコンだけでなく、台所や浴室にも多く繁殖しています。

◆症状  夏型過敏性肺炎の主な症状は、咳(空咳)、発熱、息切れが3大症状といわれています。鼻水は出ないけど喉のイガイガ感から咳が続き、階段を上る時に息切れがしたり、発熱が続きます。多くの場合は抗原となるカビを吸い込んだことによるアレルギー反応ですが、カビを吸い込んですぐに症状が出るわけではなく、6~8時間後に現れるので夏カゼと思ってしまうことがよくあります。症状がカゼと似ていますが、一つだけ私たちにも分かりやすい特徴があります。それは、原因となるカビが発生している場所を離れると症状が治まってしまうということです。例えば自宅ではよく咳込むのに、自宅以外の場所(ホテルなど)に数日間滞在したときは、咳がほとんど出ずに自宅に戻ったら、また症状が出る、こうした場合には、夏型過敏性肺炎の可能性が高いといえるでしょう。

 しかし、ただのカゼと思って放っておくと、どんどん症状が重くなり、次第に息切れなどの呼吸困難を伴う肺炎の症状が現れるようになります。さらに環境の改善をせずこの状態を何年も繰り返すと、肺が線維化し硬くなって肺繊維症という慢性的な病気につながる場合もあります。

◆治療  最も大切なのは抗原となるカビを取り除くことです。特別の治療をしなくても、入院して抗原から遠ざけることにより症状の改善をみることも多くあります。薬物療法としてはステロイドが中心で、症状に合わせて対症療法を行います。

◆予防  カビの繁殖しやすい条件を作らないことが大切です。エアコン・加湿器・洗濯槽をまめに掃除しましょう。エアコンは切る前に15分程度送風運転すると内部を乾燥させることができます。

 原因となるトリコスポロンというカビは、気温が20℃以上、湿度が60%以上になると活動をはじめ、高温多湿になるほど増殖し、胞子をたくさん飛ばします。そのため真夏を中心に注意が必要とされてきました。しかし、最近はマンションの気密性が高く、カビの繫殖に適した室内環境になっています。特に風通しが悪く、湿度が高くなりやすい場所は要注意。例えばキッチンの流しの周辺、洗面所やバスルームと脱衣所、洗濯機置き場近くの床、北側の押し入れや窓のサッシ回りなどはチェックが必要です。

 エアコンの内部が、トリコスポロンの繫殖場所となることもあります。エアコンを一年中使用する家庭では、室内の条件(温度、湿度)がカビに向いていると、季節の関係なくほぼ一年中、注意が必要となることもあります。