2021.01.20

271号 ロタワクチン 1回目は14週6日までに

 ロタワクチンは、ロタウイルスが原因で起こるウイルス性胃腸炎を予防する、飲むタイプのワクチンです。ロタリックスとロタテックの2種類があり、どちらのワクチンも効果は変わりません。 
ロタワクチンは他のワクチンに比べて接種できる期間が短いワクチンです。どちらのワクチンも生後6週目から接種可能ですが、1回目の接種は生後14週6日までに行わなければいけません。15週目以降は基本的にできません。そして、それぞれ4週間以上の間隔を空けてロタリックスは生後24週までに2回、ロタテックは生後32週までに3回の接種を終了します。ロタウイルスワクチンは、安全性の面から、接種対象となる期間が限定されているため、接種対象となる期間を超えた場合は定期接種・任意接種(自費)のいずれも受けることができません。

◆ロタワクチンと腸重積  ロタワクチンの生後15週以降の初回接種では腸重積症の発症リスクが増大することが分かっています。1998年(平成10年)に米国で承認された「初代」のロタワクチン(ロタシールド)が、接種後に腸重積症の発生報告が多数あったため中止となり、その報告の多くは生後13週以降の初回接種でした。もともと腸重積症は3か月以上2歳未満の乳幼児、特に1歳前後の乳児に発症することが多い病気です。ですから、腸重積症起こりにくい低年齢で接種を開始することが重要です。現在のワクチン(ロタテック・ロタリックス)では、接種時期わ守ることで安全に接種されています。ただし、生後14週6日までに初回接種を行えば、腸重積症を起こさないということではありません。特に初回接種後7日以内は、腸重積症を疑わせる症状(①不機嫌の持続、②嘔吐を繰り返す、③血便(粘液と血が混じったような便)が出る)に注意し、このうち一つでも認めた場合は、速やかに受診して下さい。

◆腸重積症  腸重積症とは小腸の一部が大腸にはまり込んで抜けなくなってしまう病気です。造影剤や空気を肛門から高い圧で注入する「高圧浣腸」という方法で腸を押し戻す治療を行います。入り込んでしまった腸は血液が流れにくくなり血行障害をおこし、長時間経過すると腸の壊死(細胞の死滅)をおこすため、出来るだけ早く治療を開始する必要があります。

◆ロタワクチン感染症  ロタウイルスは感染力が非常に強く、ごくわずかなウイルスが体内に入るだけで感染してしまいます。感染すると1-3日の潜伏期間の後、通常は発熱と嘔吐から症状が始まり、その24-48時間後から水のような下痢(白っぽくなることがあります)がくり返し出るようになります。生後4か月~2歳の乳幼児に多くみられ、5歳までには大半の子どもがかかります。何度でも感染しますが、感染を繰り返すごとに症状は軽くなっていきます。しかし、初めて感染したときに症状が強くあらわれることが多く、乳幼児では激しい嘔吐や下痢により脱水になるなど重症化することがあります。重症化すると血圧低下、脳症、けいれん、急性腎不全などをひきおこすことがあり、命に関わる場合もあります。
 残念ながらロタウイルスに対する有効な抗ウイルス薬はなく、下痢、脱水、嘔吐に対する治療を行いながら症状が治まるのを待つしかありません。つまり、ワクチンによる予防が大切です。生後3か月までは、お母さんからもらった免疫があるので感染しても症状が出ないか、症状があっても軽く済みますが、生後3か月以降に初感染すると重症化しやすくなります。接種期間が短いワクチンですが早めに接種を開始し、期間内に終わるようスケジュール管理をしっかりとしていきましょう。