2020.06.20

265号 子どものマスクについて

日本小児科医会は「2歳未満の子どものマスクは不要、むしろ危険」という方針を発表しました。日本国内では子どものマスクによる事故の報告はまだありませんが、アメリカではすでに警告が出されており、日本でも事故が起こる前に情報を周知することが必要、ということのようです。しかし、2歳以上のこどもは安心、ということではありません。

◆子どものマスクによる危険性  ・呼吸が苦しくなり、窒息の危険性がある ・嘔吐した場合にも、窒息する可能性がある ・熱がこもり、熱中症のリスクが高まる ・顔色、呼吸の状態など体調異変の発見が遅れる 等が考えられます。特に、自ら息苦しさや体調不良を訴えることが難しく、自分でマスクを外すことが困難な2歳未満の子どもでは、このような危険性が高まります。2歳以上であっても、いろいろな機能が未熟である子どもには、マスク着用を強要しないことが重要です。スポーツ省も「学校の体育の授業におけるマスクの着用は不要である」としています。外で運動するなど、汗をかくような状況ではマスクの着用は避けましょう。特に布マスクは水分を吸収すると目詰まりして呼吸が苦しくなります。

◆子どものフェイスシールドについて  額に装着し、顔全体を透明のフィルムで覆う「フェイスシールド」。フェイスシールドについては、マスクよりも子どもの顔色が把握しやすいというメリットはあります。しかし、フェイスシールドは基本的に感染リスクが高い医療従事者などを守るためのものです。子どもの着用は熱中症のリスクを高めるほか、物がゆがんで見えるなどして集中できない、転んだ際に顔や目をけがする、等の可能性があると言われています。

◆では、どのような対策ができるのでしょうか?  マスクをする目的は、セキやクシャミによる飛沫感染を防いだり、自分の鼻口を触らないようにするためです。一般のマスクでは、ウイルス粒子を完全にブロックすることはできません。やはり一番大切なことはソーシャルディスタンス。2メートル以上間隔をあける。それから手洗いです。予防としては、マスクよりもきちんと手洗いする方が効果的だと言われています。泣いたりおしゃべりしている乳幼児は、保護者向きに抱っこするようにしましょう。

 新型コロナウイルス感染症の特徴として、子どもは感染しても、無症状か軽症が圧倒的に多いということが分かってきました。また、マスクをしていない子どもからの感染が不安、という方々もおられるようですが、感染経路も「大人から子ども」がほとんどで「子どもから大人」、「子どもから子ども」という経路は極めて少ないと報告されています。子どもがリスクを負わないためには、まず大人が予防対策をしっかりすることが大事です。

 マスクが当たり前となった世の中で、マスクを着けないというのは世間の目も気になるところですよね。状況によっては、一時的に子どもにマスクやフェイスシールドをするという対応が必要なこともあると思います。しかし、そのような場合でも、安全性を確認し、出来るだけ素早く用事をすませ、子どもの様子から目を離さないことが大切です。しかし、大人の過剰な心配や神経質過ぎる行動は、子どもに過度な不安や緊張感を与えてしまいます。ルールやエチケットを大事にしながらも、柔軟に対応していくことが大切です。そして、自宅では、子どもも大人もマスクを外し、コミュニケーション能力を高めるためにもお子さんとおしゃべりする時間をできるだけ作りたいですね。