2021.08.20
278号 いろんな症状のアデノウィルス感染症
アデノウィルスはいろいろな臓器に感染するウイルスで、1953年に発見されました。50種類以上の型があり、それぞれのウイルスが異なる性質を持っているので、種類によって引き起こす症状が異なります。免疫が付きにくく、種類がたくさんあるため何回も感染します。潜伏期間は長く、5~7程度です。ちなみにたくさん型があるアデノウイルスですが、このうちの1/3は、病気を引き起こすことは無いとされています。
アデノウイルスによって起こる病気
◆咽頭炎・滲出性扁桃炎(1・2・3・4・5・7型)
急に発熱し、のどの痛みや頭痛を訴えます。39℃以上の高熱数日、時に1週間続きます。咳はひどくなく、扁桃腺に白い膿のようなものが付いたり、のどの奥の壁にイクラのようなブツブツした腫れが見られることがあります。
◆咽頭結膜熱(主に3型、他に4・7・11型)
例年6月頃から増加し、7~8月に流行のピークがあります。発熱・のどの痛み、結膜炎が主症状です。熱は40℃前後の高熱になったり、37℃前後の微熱になったりという状態が3~5日ほど続きます。その間、頭痛・腹痛や下痢を伴うこともあります。夏季に幼稚園や学校のプールの水を介して感染することも多いことから、俗にプール熱とも呼ばれています。
◆流行性角結膜炎(8・19・37型)極めて感染力が強い
さらさらした目やにが出る、涙がでる、まぶしい、などの症状が現れます。まぶたは腫れ、結膜はむくみ、充血がみられるようになります。そして発症1週間頃から角膜に点状の濁りが現れることがあります。細菌など他の原因による結膜炎にくらべ症状は重いことが多く、耳の前にあるリンパ節が腫れて触ると痛みます。
◆急性胃腸炎(31・40・41型)
乳幼児期に多いのが特徴です。下痢、嘔吐、嘔気、気分不快、微熱、腹痛といった、ロタウイルスによる胃腸炎と似た症状が見られます。感染していても症状が出ないこともあり、気づかないうちに他人にうつしてしまうことがあります。
◆出血性膀胱炎(11型)
排尿時に痛みがあり、真っ赤な血尿が出ます。おしっこに何度も行きたくなる頻尿が見られることも。症状は2~3日で良くなり、血尿は10日程度で改善します。
◆肺炎(3・7・21型)
乳幼児に感染し重症肺炎を起こすものですが、頻度は高くありません。合併症として、肝機能障害、脳炎・脳症、胃腸症状、腎、心臓にも多彩な障害をきたします。
【感染経路・予防】 咳や鼻水の飛沫による感染、患者とのタオルの共用や手指を介した接触感染、または患者の便の中に排泄されたウイルスが手指に付着し、手洗いが不十分なまま目の結膜や鼻の粘膜に触れることでも感染します。アデノウィルスの感染力は非常に強いものです。さらにウイルスは便の中に約1か月間出続けますから、家族間で二次感染する恐れがあります。
アデノウイルスそのものに効く薬はありません。一番の予防は手洗い・うがい。そして手洗い後はしっかり水気をふき取り、アルコール消毒を行いましょう。感染症予防の基本はどれも同じですね。